「生還」を信じて撮影した闘病生活
2009 年、主人が癌で余命宣告を受けてから、闘病生活を撮影していました。薬学博士として末期癌の方々を何人か生還させてきた姿を傍らで見ていましたので、いつかビデオを主人と一緒に見ながら「生還への軌跡」として振り返る日が来ることを信じて撮っていました。
結局二人で見返すことは叶いませんでした。
主人が亡くなってからの数日は喪主として、やるべきことがたくさんあり、ビデオを回している場合ではなかったはずなのに、なぜか主人の遺体や子供たちの姿を撮影していました。
今思うと、あの時から映画製作は始まっていたのかもしれません。もしかしたら主人が撮らせていたようにも思えます。
主人が亡くなって3年半が過ぎたころ、大きな心境の変化がありました。「死への恐怖」が「生への肯定」へとつながり、生まれることと死ぬことは同じ位置にあることを感じるようになったのです。
映画「おくりびと」のヒットで「納棺士」にスポットが当たり、亡くなった人を送ることの大切さが話題になりました。同じように人を看取ることの意味や大切さが伝わる映画を、誰かがつくってくれたらいいのに……と思っていました。
そんな時、知人が「ひろ子さんが自分でつくれば?」と電話してきたのです。その言葉にスイッチが入ってしまいました。 |